岩木山の頭の上に真っ青な空が広がり、北国・弘前にもひとときの夏が訪れています。
さんさんと降り注がれる陽光を浴び、ゴールド農園の木々も眩しそう。
きれいに刈り込まれた地面には、りんごの木の影法師がそよ風にゆれてゆらゆらと踊る風景は夏の風物詩です。
そして、その頭上を見上げると、たくましく伸びた枝のあちこちにずいぶんと立派になったりんごを見ることができます。

無袋で育てられているゴールド農園の「葉とらずりんご」たちは、葉っぱから送られてくるたっぷりの栄養でまん丸にふくらんでいます。

 この時期の農園の仕事のひとつに「ばや取り」があります。
「ばや」とは聞き慣れない単語ですが、弘前の言葉で、「不必要な枝」という意味です。

 8月を迎えると、幹や太い横枝のあちこちから若芽が吹き出します。
空に向かって真っ直ぐと元気よく伸びるこれらの枝は、端から見ればりんごの生命力を感じさせますが、これをそのままに放っておくと、枝はどんどん成長し、りんごの木が蓄えている栄養分を吸い取ってしまいます。
そこで「ばや=不必要な枝」と呼ばれているわけです。

 今の時期、枝に実った無数の実を大きく成長させるために木はたくさんの養分を必要とします。
しかし、「ばや」が生えてくれば、そちらに養分が取られてしまうのです。

そこで人間の登場です。

わたしたちりんご農家は、農園に並ぶりんごの木を一本一本見て歩き、2回にわけて「ばや」をはぎ取るか、ハサミで切り取り、りんごの木が安心して実に栄養を集中できるような環境を作ってあげるのです。

 ただし、この「ばや」もすべてが「ばや=不要な枝」ではありません。
というもの風や台風で枝を失ってしまった木もあります。
そうした木に「ばや」が出てくると全部はぎ取らず、将来的によい枝になりそうなものを残してあげます。
すると「ばや」は「必要な枝」となって、数年後にはりんごの実を実らせるのです。

 「ばや取り」が一段落すると次に行うのが「支柱入れ」です。
今、ゴールド農園で栽培しているりんごで一番早く収穫するのは「つがる」です。
平年では9月中旬から、早い年では9月初旬から収穫が始まります。
収穫時期のりんご1個の重さは約300g程度。当然のことながら1本の枝にりんごがいくつも実るわけですから、枝に数キロもの重みが加わることになります。
おまけに、りんごの枝というのは横に伸びていくため、重さには弱く、収穫前の果汁たっぷりに実ったりんごを枝だけでは支えることができないのです。
そこで、行うのが「支柱入れ」です。

 作業としては、枝全体をみて、枝の弱い部分や力が過度にかかっている部分を見極めます。
その上で、枝を支えるフックがついた支柱をつっかえ棒にして支えてあげるのです。

とても簡単なように思えますが、実はこの作業にも長い経験が必要です。
枝にかかっている重さを支柱で上手く分散してやらなければ、何かの拍子で支柱の先から折れてしまうこともにもなりかねません。

 また、支柱は単に枝を支えているわけではありません。
今の時期、美味しいりんごを育てるには眩い太陽の光が不可欠です。
わたしたちりんご農家は、木を育てていく際、枝の一本一本に均等に日光が当たるような枝作りをします。
そのため、実が軽いうちは、どの枝も太陽の光をいっぱいに浴びることができます。
しかし、実が重くなってくるとどうしても枝が垂れ下がり、ある枝は下段の枝と重なり合い、ある枝は日陰になってしまったりと、十分に日光を受けることができない状態になってしまいます。

そこで、支柱を使って枝を支え、樹間の隅々にまで日光が届けられるようにバランスを取ってあげるのです。

 美味しいりんご作りとは、りんごの木本来が持っている力と人の知恵が融合することで初めて可能になるのです。

 今日もゴールド農園では「支柱入れ」する姿が見られます。
収穫の時期まであと1カ月。
大きく育ってきたりんごに期待を込めながら、枝を一本一本、見て回ります。




幹から伸びた「ばや」を一本一本はぎ取ります。地道な作業ですが、甘くて美味しいりんごを作るためには欠かせません。
はぎ取った「ばや」。一本の木からこれだけの「ばや」が生えていました。
無数のりんごがたわわに実った枝を支える支柱。風などで外れてしまわないよう、しっかりと支える必要があります。






日本一美味しいりんごを作ろう

▲ページTOPへ